冷徹旦那様との懐妊事情~御曹司は最愛妻への情欲を我慢できない~

その夜は眠れなかった。

頭の中には和泉と過ごした幸せだった日々。それから両親との優しい思い出が過り悲しくなる。
和泉が両親のようにいなくなってしまったら。

(それだけはだめ、でも和泉と別れるなんて……)

ぐるぐると同じことばかり考え、結局一睡もできないまま朝を迎えた。

ベッドから出てカーテンを開ける。朝の光りの眩しさに目を眇めた。

爽やかな朝なのに気分は果てしなく沈んでいた。

(和泉が好きだけど、これ以付き合うのは無理だよね)

長い時間考え続けた奈月は心を決めていた。和泉との結婚は諦めると。

叔父の過激な発言はただの脅しなのかもしれないけれど、奈月と結婚するのは和泉にとってマイナスでしかないとはっきり分かったからだ。

(私には一生叔父様の存在が付いて回る)

何もかも捨てて遠くに逃げるくらいしか、解放される方法が無い。でも和泉にそんな真似をさせる訳にはいかない。

(和泉は私と別れても大丈夫)

彼なら奈月よりも余程素晴らしい女性と出会い幸せになれるだろう。

叔父を怒らせなければ広川堂に何かされる心配もなくなる。

(私が諦めれば全て上手くいく……)

他に選べる道はないと、このときの奈月は心からそう思っていた。

その日の夜。いつも通りの仕事を終えて自宅の自分の部屋に戻ると、奈月はスマートフォンをバッグから取り出した。
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