サンタクロースに恋をした
「梨衣名先輩は、彼氏いるんですか?」
「いないわよ。好きになっても振り向いてもらえないもの。……だから、片思いが実っている2人を見るの、すごく羨ましいの」

 多分……先輩は高嶺の花の存在なんじゃ、と思う。美人で頭が良くて料理が上手で、しかもこんな広々とした家に住んでいて、どこにも否がない。

 私が男だったら、尻込みしてしまう。

「好きな人が自分を好きになるって、奇跡みたいなのよ」

 奇跡……。うん、それはたしかにそう。

 なのに私は……。

 ああまた考えてしまう、先輩のことを。だめだって言い聞かせているのに、どうして先輩のことばっかり頭に浮かぶの? もう、本当に止めにしないと。 

「愛莉ちゃんは、誰か好きな人いるの?」 

 梨衣名先輩は丸山さんに質問をした。

「あっ、その……います。でも……叶うかどうかは……」

 その時一瞬、丸山さんが安藤のことを見たような気がして、心がざわついた。

「恋って、儚いわよね」
「でも、だからこそ美しいんですよ、きっと」

 莉子の締めに、皆はうんうんと首を縦に振った。




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