サンタクロースに恋をした
「おーい安藤。呼ばれてるぞ」
「え? ああ」

 昼休み、友達とご飯を食べていると訪問者が来た。

 それは同じ委員会で隣のクラスの神木さんで、手にはなにやら手作りお菓子のようなものがある。

「安藤くん。あの、これ、この前のお礼に」
「この前?」
「ほら、委員会の前にお菓子くれたでしょ?」 
 
 そう言われてもピンと来ず、記憶を辿ってみると確かに委員会が始まる前に食べていたチョコレートを数個あげたような気がした。

 でもあれには特別な意味なんてものは何もない。

 ただ1人で食べているのもあれな気がして、隣に座ってきた彼女にあげたまで。

「いや、あれはそんな。別にお礼なんて」

 それより、この状況は非常にまずい気がするのだが……。

 今この教室の中には平川がいて、ついこの前映画を一緒に観に行ったばかりで、平川はそもそもひどいフラれ方をして男があまり好きではなく、それをトータル的に考えるとやはりいい状況とは言えない。

「せっかく作ったから」

 そう言われると断るのも心が痛い。それに、彼女は多分これを受け取らないとここから退いてくれないだろう。

「じゃ、じゃあ……」

 受け取ると、ぱあっと表情を明るくする。
「ありがとう。じゃあ、また委員会でね」
「おう」

< 52 / 157 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop