【極上の結婚シリーズ】ママになっても、御曹司に赤ちゃんごと包み愛されています
楽しそうに話す奥さまの隣で、私は呆然と赤い着物の女性を見つめた。美女の中でも一際目を引くその人は、確かにいっちゃんに相応しく思えた。

「莉帆、どうしたんだ?」

すると私と奥さまのもとへ、いっちゃんがやってきた。

スーツ姿がよく似合ういっちゃんは、この世のすべてを望むままに手にしたような完璧な容姿をしている。長身で長い手足、男っぽいのにきれいな顔立ちは、どんな女性の心も一瞬で鷲掴みにする。加えて華麗なる家柄の御曹司とあらば引く手あまただ。本来なら私なんて近寄ることさえできない。

いつもは必要以上に気にしないそれが、途端に重くのしかかってきた。

どうして私はこんな華やかなパーティーに普段着で、しかもほとんどノーメイク、洗いざらしのセミロングヘアのまま来てしまったのだろう。いきなりだったとはいえ、考えが及ばなかった自分が恥ずかしくてたまらなくなる。もう少し、きちんとしてから向かうべきだった。どれだけ取り繕ったとしても、この会場にいるどの女性の足元にも及ばないけれど。

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