【極上の結婚シリーズ】ママになっても、御曹司に赤ちゃんごと包み愛されています
「現にここに着いたときより、今のほうが顔色いいだろ?」

「……それはごはんを食べたからだと思うよ」

得意げないっちゃんに、思わず突っ込んだ。

「莉帆が作ったごはんだからだよ」

一分の隙もない顔で微笑まれ、体中の血が沸き立ってしまう。私がいっちゃんの一挙手一投足にどれだけ揺さぶられているかなんて知り得ないいっちゃんは、屈託のない顔で泉と戯れていた。

恋愛感情抜きでそういうことを言うのは反則だ。

私は自分の気持ちを抑えつけながら、いっちゃんを責めたくなった。これ以上、私の心に踏み込まないで。

「で、どこに行きたいんだ?」

いっちゃんは泉にではなく、今度は私に問いかけた。

「……遠出はしなくていいよ。その代わり、食材の買い出しに付き合ってくれる? いっちゃん、荷物持ちだけど」

「いいよ。買い出しか。ちょっと楽しみだな」

面倒ごとをお願いしたのに、いっちゃんは快諾してくれた。買い出しが楽しみなんて、可笑しないっちゃんだ。

けれどこれくらいの自然さが、幼なじみの私たちの正しい距離だった。

いっちゃんのそばで、妹のように振る舞う生活――私は結局、それにほっとしていた。

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