Return ー2度目の人生ー
下駄箱で自分の靴を取り出している時、聞き覚えのある声がしてその方を見た。
「申し訳ないですけど、遠慮しときます」
「そんな、西村先生お願いしますよ」
なにやら教頭が先生に頼み事をしているようだ。
「剣道部の顧問の先生が居なくて困ってるんですよ。西村先生経験お有りなんでしょう?」
「そう言われても昔の話なんで。顧問とかやるつもりないです」
どうやら顧問をお願いされてるらしい。
確かに昨日の様子だと、先生めちゃくちゃ強そうだもんな…
「うわ、あの先生よく言うねー。今年来た数学の先生でしょ?」
いつの間にか靴を履き替えた知香が私の横にやって来て言う。
「うん」
わたしは頷きながら靴を履き替えた。
「顔はいいけど気力が感じられないよね」
知香が半笑いで言ったけど、私は全くその通りだと思った。
彼の目には光がない。