Return ー2度目の人生ー

下駄箱で自分の靴を取り出している時、聞き覚えのある声がしてその方を見た。


「申し訳ないですけど、遠慮しときます」


「そんな、西村先生お願いしますよ」


なにやら教頭が先生に頼み事をしているようだ。



「剣道部の顧問の先生が居なくて困ってるんですよ。西村先生経験お有りなんでしょう?」



「そう言われても昔の話なんで。顧問とかやるつもりないです」


どうやら顧問をお願いされてるらしい。

確かに昨日の様子だと、先生めちゃくちゃ強そうだもんな…


「うわ、あの先生よく言うねー。今年来た数学の先生でしょ?」


いつの間にか靴を履き替えた知香が私の横にやって来て言う。


「うん」

わたしは頷きながら靴を履き替えた。



「顔はいいけど気力が感じられないよね」


知香が半笑いで言ったけど、私は全くその通りだと思った。



彼の目には光がない。
< 20 / 33 >

この作品をシェア

pagetop