崖っぷち令嬢が男装したら、騎士団長に溺愛されました
 血走った目でその手元を見ると、机の上に一通の封筒が置かれていた。
 今日届いたものだ。差出人を確認してから乱暴にその風を切ると、中をざっと確認する。

「なんだと……」

 ジェフリーはその便箋の文字を追い、呆然と独りごちる。

『ディーン=コスタは一年以上にも亘る病で起きることもままならない。姉のアイリス=コスタは働くために皇都に出てきているが、どの屋敷に務めているのか足取りは掴めていない──』

 ディーンの弱みを掴もうとコスタ家ゆかりのものに金を掴ませて調べた調査書には、そう書かれていた。
 ジェフリーは何度もその文面を目でなぞる。

「ディーン=コスタが病弱で、起き上がることすらままならないだと?」

 では、自分の目の前に現れたあのディーンは一体誰だ?
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