崖っぷち令嬢が男装したら、騎士団長に溺愛されました
「よく聞きなさい。皇都でクーデター未遂が起きたの。お父様が率いる近衛騎士団は懸命に陛下達をお守りしたのだけど、人数が全然違って──」

 ──お父様は亡くなったのよ。

 お母様の言葉は、どこか別の世界の話を聞いているかのようで現実感がなかった。

 けれど、生活の変化はすぐにやってきた。
 使用人は最低限に減らされて、お母様は少し離れた場所にある商家に家庭教師として働きに出た。父は皇族を守るために殉職したとしてコスタ家には国から多額のお見舞金が支払われたらしいけれど、それでも大きな屋敷を維持し続けるのは限界があったのだろう。
 しかも、アイリスとディーンはそのとき、まだ十一歳の子供だったのだから。


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