崖っぷち令嬢が男装したら、騎士団長に溺愛されました
 おかしいと気付いたのは、すぐだった。
 作戦では先行部隊が四方向から突入することになっていたのに、自分達以外に誰も突入している気配がないのだ。
 それでも前へと進んだアイリスは、壁に背を寄せたまま周囲を警戒する。

「どっちだ?」

 カインは前方を見つめ、目を眇める。

 目の前には長い廊下が伸びていた。
 所々に明かりのランタンがぶら下がっているものの、薄暗い廊下の先まではっきりと見通すことはできない。

 さらに、建物内は思った以上に入り組んだ構造をしており、長い廊下には枝分かれした通路が伸びていた。ちょうど近くには階段もあり、上階と地下のどちらにも繋がっている。

 本来なら四方向から突入して、逃げる密売人を袋小路に追い込むことができるはずだった。しかし、これではどちらに行くべきかがわからない。
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