崖っぷち令嬢が男装したら、騎士団長に溺愛されました
 カチャリと音がしてドアに目を向けると、若い女性が入ってくるところだった。
 アイリスはその姿を見て目を見開く。見覚えがある人だったのだ。

「あなたは……、カトリーンさん?」

 ハイランダ帝国ではまず見かけることがない波打つ金色の髪に花のようなピンクの瞳。それは、アイリスがよくディーンのための薬を買い求めにいっている薬店の薬師だった。

「改めてこんにちは。私、宮廷薬師もやっているの。傷の具合を見せてくださいね」

 目の前の薬師──カトリーンはアイリスの元まで歩み寄ると、包帯を解いてゆく。そして、傷口を確認してふむと頷いた。

「だいぶよくなってきているわ。手や指は動く?」
「動きます」

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