崖っぷち令嬢が男装したら、騎士団長に溺愛されました
 アイリスは唇を噛み、ぎゅっと手を握りしめる。

 ──ああ、終わったのだわ。何もかも……。

 天を仰いだが、状況は変わらない。頬を一筋の涙が伝う。

「全ての責任は私にございます。甘んじて罰は受け入れましょう」

 ディーンである必要がなくなったアイリスは、静かにそう告げた。

 どんな罰であろうと、受け入れる覚悟はできている。
 自分はどうなろうと構わない。

 けれど、ディーンにコスタ家当主の座を残してあげられなかったことが、そして何よりも、今まで親身になって自分を指導してきてくれた目の前の人に裏切りの事実を知られたのだということが胸に突き刺さり、心は張り裂けそうだった。


< 167 / 300 >

この作品をシェア

pagetop