崖っぷち令嬢が男装したら、騎士団長に溺愛されました
 レオナルドから聞いた事件の一部始終は、アイリスの理解を超えたものだった。

 エイル家の三男であるジェフリー=エイルは入団当初からディーン=コスタに並々ならぬ対抗心を燃やしていた。お互いが名門騎士家系の出身であり、嫌でも比較される対象だからだ。
 さらに、ジェフリーにはその時々の同期でトップの功績を挙げ続けた二人の優秀な兄がおり、自分だけが落ちこぼれとみられることを極度に恐れていたという。
 そして、歪んだ自尊心はやがてディーン=コスタを蹴落とすという、あってはならない方向へと動き出す。

「だからって、なんでこんなことを──」

 先日の福祉施設でのごろつきの件は、レオナルドの読み通りジェフリーの仕業だった。
 金で雇ったごろつきにリリアナ妃一行を襲わせる真似事をし、その場に偶然を装って現れた自分が手柄を取る。
 さらに、護衛のアイリスの不手際を糾弾するつもりだったようだ。

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