崖っぷち令嬢が男装したら、騎士団長に溺愛されました
「彼はどうなるのですか?」
「まず、皇都騎士団は除名だ」
「はい」

 それは、アイリスも予想していた。
 これだけのことをしでかしたのだから、除名にもなるだろう。あの突入作戦は一歩間違えば失敗していた。それに、あと少し仲間の到着が遅かったらカインとアイリスは死んでいたかもしれないのだ。

「その後は軍規に従い、処分を決める審査会がある。エイル家のこれまでの功績を踏まえて酌量減軽(しゃくりょうげんけい)があるはずだ。恐らく国境警備隊で予備兵としてやり直しだろうな」
「国境警備隊の予備兵──」

 国境警備隊はその名の通り、国境を守る隊だ。
 ハイランダ帝国は数年前まで隣国と戦争状態が続いていた。今は和平協定が結ばれているので当時ほどではないにしても、軍隊の中でも最も苛酷な訓練を積み、厳しい環境で任務に当たっている。
 その中の予備兵というと、ジェフリーからすると耐えがたい屈辱だろう。 

 ジェフリーは確かに嫌みな男だった。
 けれど、彼の剣の腕が確かなことをアイリスはよく知っている。こんなことをしでかさなければきっと順調にキャリアを積めただろうにと、やるせない気持ちになる。

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