現在、片想われ中
そのことを言えば話さないと言うように後から腰に巻きつけている腕に力を加えた。

『ダメみたい』
『俺と代われ。そろそろ行けそうだ』
『分かった』

私の意識はスッと沈んでいく。

「なあ拓也、灯里にこんなことしてどうなるか分かってんだろうな?」
「もちろん。どうせ中は海里でも、体は灯里なんだ。やられるわけがない」

言い合いながらも灯里の体を傷つけるわけにはいかないので、なんとか拓也の腕から抜け出そうとする。
だけど全く動かない・・・・・・。
くそッ、力強すぎだろ。

「おいっ、さっさと放せよ」
「仕方ねぇなー」

急に力を抜かれたせいで、拓也を押し返していた俺は後ろに倒れそうになった。
間一髪で手をつくことができ、背中を打つことは免れた。

「灯里だったら大人しく座っていたのに。灯里を出せよ」
「嫌だね。それにできないんだよ、何回もすぐに交代するのは」
「何でだ?」
「代わる直後、何というか・・・・・・フッと力が抜けるように意識が沈んでいくんだ。だから今灯里は、この体の中で眠っているような感じだ」

こんなことを他人に話しても理解はしてもらえないだろう。
俺と灯里は体感しているからわかることだ。
< 17 / 33 >

この作品をシェア

pagetop