呉服屋王子と練り切り姫
 金持ちの考えることはよくわからない。屋上のヘリポートについたヘリコプターに乗せられ、何故か東京上空を旋回する。そのままさまざまな解説を続ける甚八さんの横で、私はぼうっと下の世界を眺めた。胃が痛むところに朝ごはんを詰め込んだせいで、もともと帯で締め上げられていた胃にさらなる負荷がかかる。これを今日一日中……と思っただけで、めまいがしてきた。

「モナカチャン、ゲンキナイネ?」

 甚八さんとゲーンさんが盛り上がっている中、奥さんが私にこそっと耳打ちしてきた。

「ジンパチ、ウチノにトラレチャッテ、カナシイネ?」
「いや、そんなんじゃないので……」
「ダイジョウブ、ワタシがナントカスルワ!」

 耳元でそう言ってウィンクされてしまっては、下手に何か言うこともできない。はは、と愛想笑いを浮かべると、彼女は満足そうに男性陣の話へと入っていった。
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