呉服屋王子と練り切り姫
「えっと……帰りましょっか?」
「うん、そうだね」

 なんとなくぎこちなくなってしまった私たちは、そのまま駅に向かって歩き出した。

「愛果さん、大丈夫っすか?」
「う、うん……」
「あの、俺のことは気にしなくていいっすから!」
「え?」

 駅までの道のりをゆっくりと歩いた。将太君はわざと私の速度に合わせて歩いてくれた。

「あの、俺、その……勢い余って愛果さんに好きとか言っちゃいましけど、あれはその、本心じゃないっていうか、いや本心なんすけど、何ていうか……と、とにかく気にしないでくださいっ!」

 なぜか必死に取り繕う将太君に、私は思わず笑ってしまった。将太君は少し足を速めて、私の半歩前を歩く。その耳が街灯に照らされて、ほんのり赤くなっていた。
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