呉服屋王子と練り切り姫

居候になりまして

「はいっ?」

 甚八さんの一言に耳を疑った。

「ここに住むか、と仰いました?」
「ああ、言った」
「なぜ、ですか?」
「あ、えっと……お前がいないと、玄関がまた前に戻っちまいそうで。それに、お前もここから仕事行った方が近いだろ?」
「そりゃ、そうですけど……」
「よし、決定な」

 甚八さんはポケットから取り出したスマをなにやら弄り始めた。

「今日は、とりあえずソファでいいか?」
「え、今日からですか?」
「ああ。あっちの部屋使ってないから、そこをお前の部屋にする。家具はさっき注文したから、明日には届くだろう。お前、明日荷物持ってこいよ」

 甚八さんはそう言うと、リビングにとりあえずの“道”を作り、自分はぴょんぴょんと爪先を器用に動かしてリビングを出て行ってしまった。
 ………なんか、すごいことになってしまった。とりあえず、私はそのままソファに腰を下ろして頭を抱えたのだった。
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