QUALIA ー最強総長×家出少女ー
お医者さんや身内以外に話したのは、初めてかも。

「ピアノを弾くと、なぜご両親の不幸を思い出すのですか?」

私は枕を抱え、ぎゅっと抱く。

「事故の日に、ピアノの演奏会があったんです。二人はそこへ向かう途中…」

そこまで言いかけ、また“死の旋律”が聴こえてきた。

慌てて呼吸を整え、意識を別に向ける。

訓練したから、ある程度は記憶の音を制御できた。

「死の旋律が原因で、ピアノが弾けなくなったと、琴葉は思うのですね?」

少し妙な言い方だ。

「そうですが……違うんですか?」

「いいえ。ですが琴葉は、ピアノを嫌いになった訳ではないんですよね?」

ドクッと胸が高鳴った。

「いつかまた、弾きたいと思いますか?」

麗於さんは私にすら見えていない、私の中の何かを見つけた。そんな気がした。

「こりました。すっかりと」
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