QUALIA ー最強総長×家出少女ー
それからは地獄だった。きっと共感性羞恥心の人には耐えられなかっただろう。

「あの?」

陽葵さんのめちゃくちゃ困った顔。

篤史さんは陽葵さんを呼び止めてから、五分近く黙っていた。

「あいつ女々しすぎんだろ!」

将冴さんが笑った。

私は心の中で50回くらい「頑張れ!」と唱えている。

「ここ、これ、これを…」

篤史さんはハンカチを差し出す。

「あっ! これ失くしてたやつ! ありがとう! 拾ってくれてたんだね!」

陽葵さんは満面の笑みを見せた。笑うと子供みたいで可愛い。

「でも俺、焦がしちまって…」
「えっ?」
「ハンカチ……その、洗濯して、アイロンかけたら…」

陽葵さんは焦げた跡をみる。

怒るかな? そう思ってたら、クスクスと笑った。

「全然いいよ。焦げた跡がお魚みたいで可愛いもん」

そのとき、ハンカチからチケットが二枚、地面に落ちた。
< 213 / 304 >

この作品をシェア

pagetop