QUALIA ー最強総長×家出少女ー
普段はカップルでにぎわう屋上も、今日は雪が降っており誰もいなかった。

クリスマスに向け、中央にあるクリスマスツリーには、イルミネーションのライトが飾られている。

いつもなら色とりどりに点滅するネオン。けどその色は、私にはどれも灰色に見えた。

屋上の端にある排水口に、私は吐いていた。

吐いても吐いても強烈な吐き気は治まらず、頭痛にも襲われる。

“あのニュース”は、一体、なんだったの?

グルグルと今日のバスでの出来事が壊れたテープのように再生される。

ひょっとして、名前だけ同じ誰か…?

フェイクニュースとか…?

それとも、見間違い…?

とにかく、今すぐ日本に帰りたい。

帰って全部、嘘であったと確かめたい。安心したい。

そうだよ。ルナが死ぬわけないじゃん。あの最強のルナがだよ?

それに、約束したんだ。

明日にはきっと、私の前に現れてくれる。それで全部、間違いだって、嘘だって証明してくれる。

……そうだ。きっとそうだ。

「うぐっ……、うっ…」

あれ? 涙が止まらない。

どうしよう。なんで?

胸の奥から、濁流のように黒い何かが押し寄せてくる。

一気に飲まれ、心が石のように動かなくなっていく。

「琴葉ちゃん?」
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