別れと弱さと始まりと


惨めな気持ちを隠し、同僚に別れを告げタクシーを探した。


空車のタクシーを停めて乗り込むと後ろから乗り込む人がいる。同期の小坂だった。


「なんで来るのよ」


「俺も帰るから、ほら運転手さんに住所言って」


仕方なく住所を告げた。


自宅へタクシーが着くと何故か小坂も降りる。


「ちょっとなんなの?」


「いいから、部屋まで送るよ」


部屋を開けると小坂まで入って来た。


「部屋までじゃなかったの?」


「部屋までだろ?部屋」とリビングを指して言う。


呆れた男だ。


リビングへ入ると抱きしめられた。


「泣いていいぞ」


「えっ?」


「俺の胸で泣け、貸してやる」


「うっ…借りてやる」泣いた。思いっきり泣いた。


「なんでわかったの?」


「うん?泣きそうな顔してただろ」


「理由聞かないの?」


「話したかったら話せよ、いつでも聞くから」


「ありがとう」


「どういたしまして」爽やかな笑顔だった。


小坂ってこんな表情してた?ガラスの曇りが取れたようだった。



< 10 / 10 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:18

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

明日が見えたなら  山吹色
詞里/著

総文字数/50,504

恋愛(その他)41ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
              あなたが見えない わからない      この不安伝えていいの?  誰か好きな人が出来た?  妊娠が判明したのに  彰くんにどう打ち明ければいいの?                めでたいだけなのか、無頓着な夫と不安と不信が募る妻のお話です。 妊娠初期について辛い表記があります。   苦手な方はすみませんが、    この作品を閉じて下さい。 * いつまでも片想い  若葉色 *     の2人の結婚編です。  単体でも楽しめますが、前作の馴初め編も良ければご覧下さい。
いつまでも…片想い  若葉色
詞里/著

総文字数/48,156

恋愛(その他)37ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
    通勤途中に見かける人に片想い中  会えるだけでも嬉しいけど、  もっと近づきたい 山内七海(やまうちななみ)                     21歳 会社員 神崎彰汰(かんざきしょうた)        25歳 会社員    続編の   明日が見えたなら  山吹色  良かったらご覧下さい ******************    みやのもり様 素敵なレビューをありがとうございました
今更…ありだった
詞里/著

総文字数/1,061

恋愛(その他)3ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
 私は1人で怒ってる。  何故なら夫が私の会話を聞いているようで聞いていないから。   

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop