王子なドクターに恋をしたら
それからはまた、電話とメールだけの日々。

時々、和泉くんの家に行って空気の入れ替えと掃除をして2階のバルコニーから海を眺めた。
天気のいい今日は真冬の冷たい風も気持ちよくて煽られる髪をそっと耳に掛け思いを馳せる。

雪に包まれた町と氷に覆われた海はどこまでも真っ白で綺麗だ。
あたしの生まれたこの季節を和泉くんはまだ知らない。
二人でこの景色を見たかった。

「寂しい…」

和泉くんのいない空っぽの家は寒々として寂しすぎる。
後ろを振り向き部屋を見て虚無感が広がりため息をついてまた真っ白い景色を見た。

あたしの誕生日2月24日には和泉くんからプレゼントが届いた。
中には有名な日本人デザイナーのアキミツヒトのバックとストールが入っていてびっくりした。
これってブランド物に疎い私でもわかる高級品でかなりお高いはず。
何だか使うにはもったいなくてこの家のリビングに飾ったままで、こんな高級品くれなくてもいいから一目和泉くんに逢いたいと思ってしまう。

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