王子なドクターに恋をしたら
カチャッと和泉くんは自分のベルトを外しあたしを後ろから抱きしめた。

「和泉さん危険ですからベルトは外さないでください?」

すかさず梶原さんが注意する。
でも和泉くんはあたしを離さず腕に力を込めた。

「パイロットが優秀だから危険なことはないでしょう?」

「そんなことはないですよ、買いかぶり過ぎです」

「大丈夫信用してますよ。少しだけ、目を瞑っていてください」

「目を瞑ったら操作できませんよ」

クスクス笑う梶原さんは諦めたのかもう何も言わなかった。

「和泉くん大丈夫?ベルトした方がいいんじゃない?」

「大丈夫。少しだけ、こうしていたいんだ」

頭上に吐息がかかりあたしは肩を竦めた。

「ほら、夜景を楽しもう。上も見てよ、月も綺麗だよ」

言われた通り上を見れば満月に近い月が綺麗に輝いている。
今日は雲も少なくいい天気だから星も良く見える。

「うん、きれい。あったかい」

斗浦部でもこうやって二人で夜空を見ていた。
抱きしめられる腕があったかくてあたしは身を任せるように背中を預けると、頭に頬ずりされてくすぐったくてまた肩を竦めた。
振り向けば愛おしげに目を細める和泉くんの瞳。
空の星に負けず劣らず綺麗なブルーは光り輝いていて見とれてしまった。
いつものあたしの好きな和泉くんがここに居る。
感じていた不安は消えてただただ和泉くんが愛しくてたまらない。

梶原さんがいるっていうのにあたしたちは暫くいちゃいちゃしながらヘリからの夜景を楽しんだ。
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