王子なドクターに恋をしたら
和泉くんはやっぱり酷い男だった。
あの日、気持ちを確かめ合ってこれからもずっと一緒だと思ったのに、大事な話を直前まで教えてくれなくて、またあたしを一人置き去りにして寂しい思いをさせて、待っててなんて残酷なことを言う。
離れるなんて許さないよだなんて、こっちのセリフだ。
離れていったのは和泉くんの方じゃないか。
思い出すとなんだかムカムカしてきた。
ついつい力を込めてバチンと花の茎を切る。
「あんなにドイツ行きを渋ってた奴が無断欠勤の後、急に行くと言いだした時は驚いたが、お嬢ちゃんが決心させたんだろ?感謝してるんだぜ。あいつにとってドイツ行きは必要だったから」
「あたしは何もしてません和泉くんが勝手に決めたんです」
ブスッとした顔であたしはまたバチンと茎にはさみを入れる。
「それに無断欠勤ではないでしょう?幸田先生に休みを代わってもらったって言ってたはずです」
「幸田なあ…」
苦笑いを溢す黒崎先生。
幸田先生があたしにきつく当たったことを聞いた和泉くんは怒って幸田先生の胸ぐらを掴み一触触発だったそうだ。
止めに入って大変だったと黒崎先生に再会した時に聞いてあたしは信じられなかった。
電話で和泉くんに聞いた時ばつが悪そうに事実だと認めても、いつも冷静で優しい和泉くんがそんなことするなんて今でも信じられない。
「あいつは案外熱い男なんだ。ムッツリとも言う」
と黒崎先生は茶化して言うから睨んでやった。