王子なドクターに恋をしたら
痛い思いして可哀想だけど、と言うとクスリと千雪が笑う。
その笑顔を見るだけで僕の心は満たされた。

僕のこれからを考えたとき、千雪のいない人生なんて考えられなかった。
こんな事を思うなんて少し前の僕には想像もつかなかっただろう。
自分勝手な僕をずっと待ち続けてくれた千雪が愛おしくてしかたがない。
僕はかけがえのない人を手に入れた。

千雪はどこへでも僕に付いていくと言ってくれた。僕もそうだ。
なら、僕らが生きる場所は二人が出会ったここしかないと思った。
幸い働く場所もある。(叔父さんの跡を継ぐのは二の次だということは叔父さんには黙っておこう)
そうして僕はこれからの人生を千雪と共にこの斗浦部で暮らすと決めた。

「もう一人にしないよ。僕らはずっとこの町で幸せに暮らすんだ」

「嬉しい、幸せ…」

噛みしめるように呟く千雪を抱きしめその温もりを一生離さないと心に誓った。
爽やかな海風が僕たちの頬を掠めていく。
愛する人といるだけで海と山に囲まれた小さな町がこんなにも愛おしい。



「ちゆ、愛してるよ…」





この町で、僕らはずっと生きていく。




FIN
< 311 / 317 >

この作品をシェア

pagetop