王子なドクターに恋をしたら
もう、ずるいな。

無邪気に可愛い顔で笑うくせに、そう言うときだけ大人の顔をする。
余裕そうに微笑んでる和泉くんがちょっと憎らしい。

「千雪は意外とそそっかしいんだね」

「む…ち、違うか…」

ギュッと手を掴まれて反論しようとした言葉が詰まった。

「また転ばないように」

そう言って、からかう様ににっと笑った和泉くんは歩き出した。
あたしは何も言えずに手を引かれるままついて行くけど、今のあたしを見られたくなくて俯いた。
にやけて、グッと頬に力を込めても崩壊しちゃう。顔が熱いよ。

やっぱりドキドキするのはあたしばかり。
でも、胸がいっぱいで苦しいくらいなのにそれが心地いいんだ。
やっぱり、あたし、和泉くんが好きだな。

きゅっと手に力を籠めたら握り返してくれる。
一旦手が離れたと思ったら指を絡めて恋人つなぎになった。
ちらっと和泉くんを見たら目が合って綺麗なブルーの瞳が甘く微笑む。

和泉くんは天然の人たらしとか?
こんなこと、相手が誰でも出来るのかな?
そんなの嫌だな、和泉くんに誰も触れてほしくない。
和泉くんはあたしのものでもないのに勝手に嫉妬しちゃう。
無意識に頭を和泉くんの腕に寄せて手に力を込めた。
そしたらまた握り返してくれる。

なんかデートみたいだな、これってデートって言うのかな?
あ、なんだか、そう思うだけで嬉しくて涙が出そう。
切ないけど、幸せな気分だ。


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