王子なドクターに恋をしたら
「あたしはね、怒ってるわけじゃないのよ?あんたを心配してるの。高槻先生はいずれ東京に帰って行ってしまう人なのよ?分かってる?」

「わ、分かってるよ…」

両親にだって言われてる、あたしだってわかってる。わかってるけど…

「だって…好きなんだもん…この気持ちは止められないよ…」

「高槻先生は遊びのつもりだったとしても?」

「え?」

「あんな素敵な人、東京に恋人の一人や二人いるに決まってるじゃない。今は独身みたいだけど、すごいとこの御曹司らしいし婚約者が居るかもしれないのよ?」

「い、和泉くんは恋人はいないって言ってたよ。…って、御曹司?」

「そう、高槻コーポレーションって知ってる?先生はあそこの社長の息子なんだって。院長先生はその社長の弟さんらしいよ。千雪知らなかったの?」

御曹司?聞き慣れない言葉にぽかんとする。

でも、高槻コーポレーションっていったらあたしも名前だけは知ってる。貿易やら都市開発やらリゾート開発やら手広くやってるらしい。ニュースやコマーシャルでよく見るもの。

和泉くんはそんな大きな会社の御曹司?
家族の話しとかはしてたのに、そんな大事なこと教えてはくれなかった。

「院長先生が叔父だっていうのは聞いてたけど…御曹司ってのは知らなかった…」

「そう、なんで教えてくれないんだろうね?大事なことだと思うけど。それって千雪に話すことじゃないと思ってるのかな?今だけの付き合いだから?」

「……」

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