王子なドクターに恋をしたら
何とかメイクで隠したつもりなのにお母さんに「目に隈出来てるわよ?夜更かしはお肌に大敵よ~」とあっさり見抜かれてしまった。

やんなっちゃうな~この分だと泣いてたことも気付かれてるよね?母恐るべし。

はあ~っとため息をついてあたしはお店の開店準備をするためにシャッターを開けた。
ガラガラと大きな音を立てて上がっていくシャッター。
ふと、外に見慣れない白い車が目の前に停まっててあたしは目を瞠った。
その横に車に背を預けていた人物がこちらに気付いて顔を上げる。

「う…うそ、なんで?」

居るはずの無い彼が目の前に居てあたしに儚げに笑いかける。
昨日あんな電話してしまって、掛け直す勇気も無かったのに、目の前にいるなんて想定外だ。

「千雪…」

「和泉くん…」

驚き過ぎて硬直してたあたしの足が、愛しい声に引き寄せられるように自然と動いて、手を広げて待っている和泉くんの胸に飛び込んだ。

あったかい胸に包まれて、ギュッとしがみ付くと抱きしめ返されて、本物の和泉くんだと思うとあんなに泣いて枯れたはずの涙がまたこぼれ出す。

「和泉くん…和泉くん…」

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