翠玉の監察医 法のあり方
「監察医とは、事件の可能性があるとされたご遺体を解剖し、死因や事件性を究明することが主な仕事となります。しかし、世界法医学研究所ではどなたでも解剖の依頼をすることが可能です」

「つまり……由美子は何らかの事件に巻き込まれた可能性があるということですか?」

透が震える声で訊ね、圭介が「まだ捜査の途中なのですが、ひき逃げの可能性があります」と答える。蘭は由美子の遺体を見て言った。

「ひき逃げの場合、裁判で解剖結果を報告し、被害者がどれほどの痛みや苦しみを感じたのか、裁判官に話す必要があります。そのために由美子さんの解剖を行いたいので、ご遺族の方の許可が必要になるのです」

「突然こんなことになってしまって、心苦しいところですが……。ご協力していただけますか?」

圭介も訊ね、透は「裁判で必要となるなら……」と俯きながら答える。しかし、「待って!!」と朱莉が大声で言った。

「解剖って、お母さんの体に刃物を入れるんでしょ!?」
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