お見合いは未経験
軽く髪をセットし、シャツとスラックスを選ぶ。
休日に使用しているメンズトートに携帯や鍵、財布、カードケース、タブレットを入れ眼鏡をかける。
玄関の鏡で再度全身をチェックし、家を出た。

駅前までは、歩いて10分程度だ。

駅前のベンチに座り、タブレットで経済新聞をチェックする。
これのお陰で外でも気軽に新聞が読めるし、手も汚さずに済む。
バックナンバーもチェック出来るし、貴志にとってはありがたいことこの上ない、と思っていた。

「貴志さん。」
声を掛けてきた真奈は、柔らかい笑顔だった。

そこまでになったか、と思うと嬉しいし、さらに愛おしい。
「真奈。」

今日は真奈は淡いグレーのワンピースに、落ち着いたピンクのカーディガンを合わせている。
着ている色が淡いので、黒髪が映えて綺麗だ、と思う。

「大丈夫でした?」
「うん。新聞を見てただけだからね。うちはここから、歩いて10分くらいなんだけど、近所に食べるところがないから、駅前で、済ませてから行こうか。」
「はい。」

はい、と手を差し出すと、少し照れた様子ながらも嬉しそうに、真奈がきゅっ、と手を握ってくる。
本当に可愛い。
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