お見合いは未経験
番外4:成嶋さんのお悩み
「ありがとうございました。」
もうすでにお年は80歳になろうかというご老人に、成嶋は両手を握られ、涙を流さんばかりに感謝されていた。

継承の案件を1件終わらせたところだ。
「石倉さん、まだ、やることはありますからね。これで終わりじゃないですよ。」

「いやいや、でも一番気の重い件が、成嶋さんのお陰で片付きましたから。」
そうは言っても口先だけのことではなく、本当にやることがあるのだ。

でも、本当に気掛かりだったんだろうなあ…と思うと手掛けて良かった、とも思うのだ。

少し前に、地方の土地持ちの家に不動産屋やら銀行だかが、寄ってたかってアパートを建てさせた話である。

建てさせればいい話なので、不動産業者は家賃収入が期待できる、とかいざとなれば売却できるので、株より安心だとか、いろいろ耳に心地いいことを言う。

しかし、その資産価値が下がったり、空室ができたところで責任を取ってくれるわけではない。

冷静に考えれば、不動産は新しい時が一番価値があり、年を重ねれば価値が下がることなど分かりそうなものだが、なかなか、乗り気な時はそこまでのことを考えなかったりする。

営業もいいことしか言わなかったり、実施する方もいいところしか見えていなかったりする。

結果がウィンウィンであれば、それも問題のないところだが...。
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