お見合いは未経験
「はいっ!」
張り切っているが、大丈夫か?

「よろしくお願いします。」
と頭を下げる葵に、柳田はかなり好印象を持ったようだ。

「柳田くん、先に言っておくけど、彼女は成嶋部長の奥様だから。」
「はっ、はい?!」

まあ、その気持ちは分かるがな。
すごい、マヌケ顔だ。
柳田はかわいいが、こいつ色々顔に出過ぎる。
「あの、それ内緒でお願いします。」
口元に人差し指をあてて、目を微笑ませる葵だ。

相変わらずのツルツルした、明るい髪色のボブにふんわりした頬。
小動物のような可愛らしさは健在だった。

「大丈夫ですよ、葵さん。柳田は成嶋と面識あるので。今度一緒に仕事する予定ですし、あらかじめ言っておいた方が、叶わぬ恋に落ちなくて済みますから。」

別に嫌味でも、何でもなく、な。

「あ、あははー」
と葵は笑っている。

柳田はがっくり肩を落としているのが、丸わかりだ。
腹芸、出来なさすぎだが、こいつ、本当に大丈夫か!?

若干の不安を抱えつつ、でも、柳田は仕事でもミスは少ない方だし、努力家であることは認めているので、貴志はそっと見守ることにする。
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