お見合いは未経験
実際に、セミナーが始まるのは午後からの予定だ。
昼少し前から内部の人間については、集合をかけていた。

柳田は葵を自席に連れて行き、パソコンを見ながら結構、熱心に説明をしている様子だ。
葵もメモを取りながら、時折質問をしながら、話に聞き入っている。
一瞬、大丈夫か、とは思ったものの、あれなら大丈夫そうだと貴志は思った。

その時、お世話になりまーす!と入って来たのが、成嶋だ。

「お、柳田くん、元気?」
「成嶋部長!先日はごちそうさまでした!」
にっこり笑って柳田に挨拶している。
柳田は立ち上がってお礼を言っていて、こういうところが顧客に可愛がられるんだな、と貴志は思った。

成嶋は葵とは目線だけで、挨拶を交わしている。
それだけで、通じる関係が少し羨ましい。

「どういたしまして。また、行こうな。榊原、悪いな。準備とかもあるんで、ちょっと早目に来たんだ。」
成嶋は、今日は若手の社員を一人連れて来ていた。

貴志も初めて見る人物だ。
綺麗にセットされた髪と、少し凝った眼鏡姿がとても真面目そうな気配をまとっている。

「オレの会社の寺崎くん。寺崎、こっちはオレが世話になってる銀行のここの支店の次長。渉外課を束ねてる偉い人。で、元、オレの仲間の榊原。」
「よろしくお願い致します。寺崎忍と申します。」
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