極上御曹司と授かり溺愛婚~パパの過保護が止まりません~
「郁美! なにを言ってるんだ! 朔也くんは、お前の選んだひどい男とは違う。お前の見る目が――」

「あなた、今日のところは。郁美は傷ついているんですよ」

 ひどい剣幕で叱ろうとする父に母が仲裁に入った。

「冗談なのに。もう、食欲がなくなったわ」

 姉は乱暴に椅子を引いて立ち上がり部屋を出ていった。引き戸をこれ以上ないほど閉める音を響かせて。

 そんな娘に、父は眉根を寄せてため息を漏らす。

「美月、気にしないのよ。郁美は好きだった人に裏切られてショックを受けているの」

 母は茫然としている私を慰めるが、それでも言っていいことと悪いことがあるのにと、心の中で文句を言う。

「朔也くんはあの男のように浮気男じゃない。彼を信じなさい」

「うん。わかってる。それに朔也さんは良幸さんとは全然違うもの」

 ひと目見たときからあまりいい印象のなかった良幸さんと朔也さんとでは、比べ物にならない。

 朔也さんは男気にあふれ、性格もよく、最高に素敵な人だ。そんな彼にプロポーズされたときは現実味がなかったほど。

 私はコクッとうなずき、カレーライスを食べ始める。

 母のカレーはルーを使わずにたくさんのスパイスで作る、本格的なインドカレーだ。

 まだスパイスの分量などはノートを見なくてはわからないけれど、母直伝のカレーライスを朔也さんに作ってあげたい。

 父の言う通り、朔也さんは浮気なんてしない誠実な人だから信じている。けれど、あんなふうに横やりを入れられたら不安にもなるし、ひどいことを言う姉にイラ立ってしまう。
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