妖の木漏れ日カフェ 人間界編

「そういえば、私バイトしようかと思うの」
「あら、そうなの? まあ、そうね、大学生だし……でも、勉強に支障が出ないようにするのよ?」
「うん」

 どんなところで働きたいか、それはもう決まっていた。

 お母さんが切ってくれた時期外れの真っ赤な林檎を食べながら、スマホで家と大学の近くにあるカフェのバイト採用情報を検索すると、結構数があってどこにしようか迷う。

「この林檎、美味しいね」 
「甘いわよね」

 こっちの世界に戻って来てからも、カイさんのカフェで働いていた時のやりがいは忘れられなくて、いつかまたカフェで働きたいと夢見ていた。

 もしこっちにもカイさんがいて、こっちの世界でもカフェをやっていたら、そこで働きたいと思う。それほど、カイさんのカフェは居心地が良かった。

「あ、そういえば、最近ハーブティー専門のカフェがこの近くに出来たらしいわよ」
「え、そうなの?」

 ハーブティーに狼……。もしかして……、ううん、まさか、カイさんがこの世界にいるなんてことはない。でも……なんだか気になるそのカフェのこと。

 だって、あまりにも似ているから。今私に入ってくる情報を並べると、カイさんが近くにいるような気がして心が躍る。
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