厳島に散ゆ~あんなに愛していたのに~
 だが。


 私や冷泉どのの願いも空しく。


 御屋形様は変わってしまわれたようだ。


 あの敗戦以降、政治をあまり顧みられなくなり、遊興にふける毎日をお過ごしになるようになった。


 元来戦を厭われ、文化や芸術を愛された御方ではあった。


 ともすれば君主としてのお勤めよりも、京の都の貴族のような生き方を好まれたというか。


 それが晴持さまが亡くなられてからというもの、一層拍車がかかってしまわれたのだ。


 私には……御屋形様をお止めすることができなかった。


 晴持さまを殺したのは私であるという罪悪感から、どうしても逃れることができなかったのだ。


 無言の圧力が私を責める。
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