厳島に散ゆ~あんなに愛していたのに~
***


 御屋方様の父祖にあたる方々は代々、この国の有力大名としてたびたび上洛(京の都に出向くこと)した。


 その際、古き伝統と雅に彩られた都の佇まいに感銘を受け、この山口の町を京の都に似せた造りにした。


 内陸に位置し、三方を山で囲まれた山口は元より、京の都に酷似していたのだ。


 それゆえここ山口の地に、都を模した街並みを再現することはたやすいことで……。


 「西の京」とも呼ばれているこの山口に。


 戦乱が続き荒れ果てた都を避けて、多くの公家たちが安住の地を求め移り住んできた。


 御屋形様はそのような公家たちと、親しく交流なさった。


 大好きな京の都の香りを伝える者たちを、御屋方様は重宝なさる。


 だが御屋形様の厚意により、連中は増長し始めた。


 御屋形様をさらに悪いほうへと変えていった。
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