厳島に散ゆ~あんなに愛していたのに~
 「御屋形様、このままですと国庫が空になってしまいます」


 季節が巡っても、御屋形様の憂いは消え失せることはなく。


 昼間から酒宴を催されたり、芸事に夢中になられ一向に政務を顧みられないまま……。


 荒れ果てた都を逃れてきた公家たちを、ここ山口に呼び寄せて住まわせ。


 彼らと日夜、乱痴気騒ぎ……。


 「今のような贅沢を続けられては、大内家は破産してしまいます。御屋形様、もう少しお慎みください」


 意を決して、私は進言することにした。


 今の調子で出費が続けば、破産するのも時間の問題だったのみならず。


 これ以上……すさんだ御屋形様を見ているのがつらかったからだ。


 ところが……。


 御屋形様は私の気持ちを踏みにじった。


 「だったら税を上げればよい。昨年は豊作だったであろう? 少しぐらい年貢の量を増やしても問題あるまい」


 御屋形様は自らを悔い改めようという意思などなく。


 今の生活を続けるために、領民たちに犠牲を強いろと命じたのだ。
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