今夜はずっと、離してあげない。




「あら、氷高ちゃん。どうしたの?」

「えっ、あの、えっ……?なんでこの人がここに?」




大家さんと不審者を行ったり来たりしながら、この奇妙な組み合わせに首を傾げる。




「ああ、実は今朝、氷高ちゃんの部屋から出て行く姿を見かけて!」




その言葉に、さあっと顔を青ざめさせる。


パッと不審者の方を見れば、すっと、視線をそらされた。




「それで昨日のことも納得がいって!」

「……ど、どんなふうに、ですか?」

「この子、氷高ちゃんの親戚の子で一緒に住んでるんでしょう?」

「……………エッ、」




大家さんのあまりにも的外れな回答に、目が飛び出るかと思った。




「だとしたら色々納得できて!ベンチに座ってたのも、氷高ちゃんの帰りを待ってたからでしょ?」




にこにこと笑顔でそう妄想を語る大家さんに、違う、違うんです、と言いたいのを寸でで堪える。


< 13 / 415 >

この作品をシェア

pagetop