今夜はずっと、離してあげない。
「あ、真生、そっちに黒のペンキまだある?」
「んー、こっちもないよー」
横に置いてある缶の中を覗き込めば、黒の塗料が周囲にこびりついているだけで、中身はカラ。
「じゃあ、わたしペンキ取りに行ってくるね」
「おもたそうだし、私も行こうか?」
「大丈夫!こう見えてわたし力持ちだし!」
真生はカッターで指切らないようにね!と釘を刺した凛琉は、足早に空いた缶ふたつを持って出て行ってしまう。
……ねえ凛琉。聞きそびれちゃったんだけどさ。
「もう切ってる場合はどうしたらいいのかな……」
ぷっくりと人差し指から滲み出る血を見ながら、思わず遠い目をする。
まあいっか。やがて止まるし。
と、放置して作業を進めた。
……が。
ぐさり。
「あ、」