今夜はずっと、離してあげない。
「失礼しまーす」
不在中、とかけられた紙を見ながら、いちお声をかけてドアを開ける、と。
「……なんで千井がいるの?」
「マオマオこそどうしたの?いま学祭の準備中なんじゃ?」
保健室のベッドで寝そべっている千井がいた。
お決まりの展開みたく、女の子連れではないらしい。よかった。
「絆創膏もらいにきた」
「え?なんで?」
「じゃじゃーん」
「抑揚のないじゃじゃーんほど恐ろしいものはないよ………、って、なに?!手のひら真っ赤なんだけど?!」
私の掌全体が真っ赤に染まっているのをみて、慌てて近寄ってきた。
「えっ、これまさか血?!ちょ、まっていま救急箱、」
「いや。この全体に広がった赤は、立ちあがろうとした時に滑ってこけて赤いペンキが入った缶の中にドボンしたからなんだけど、」
「驚かさないでよ……」
「怪我はそっちじゃなくて、足」
「……足?」
するすると下に向かった千井の目は、とあるところでぴたりと止まった。
「ダンボール切ってたら、勢い余ってぐさりと足までいっちゃって」
「どんな切り方してたらそうなるの?!やっぱ救急箱!!!」