今夜はずっと、離してあげない。




わーぎゃー騒ぎ立てながらも、なんだか千井の顔はさっきよりも晴れ晴れとしているみたいだった。

たぶん、気のせいだと思うけど。




「マオマオなんでふわほわしてるのにそんなこと言えるの?!ちょっとムカつくけどどうもありがとう嬉しいです!!!」

「わわっ、」




そして、突拍子もないことを言うから大変こまる。


好感度が上昇したようで何よりだけど、がばりと抱きつかれるのはちょっと苦しい。

それに。




「あの、千井。私、両手赤ペンキまみれなんだけど……」

「その血みたいな赤を僕の真っ白なワイシャツにつけないでね!!」

「……そう言われるとつけたくなる」

「絶対やめてね?!!」



やっぱり千井はいじり甲斐があるなあ、と思いながら、なんとか引っ剥がそうとしていたところ。


がらりと扉が開き。




「おい千井、いつまで保健室に逃げ─────、」




ぴたり、声が止まった。


その声にはたいっへん聞き覚えがあり。



ギギギ……、と顔をドアの方に向けると、そこにはぽかん、と口を開けている千住サマがいた。



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