今夜はずっと、離してあげない。
降ってくるであろう叱責の言葉を待っていると、いつまで待ってもその言葉はなく。
かわりに。
「……氷高、その足どうした?」
眉を寄せたまんま、左足首に巻き付けられている包帯を見ていた。
「あ、えっと……私の不注意で、段ボール切ってたら勢い余ってぐさっといっちゃいまして」
「傷は深いのか?病院は?」
「え……千井、大丈夫だよね?」
「うん。大丈夫だと思うよー。縫うほどでもないし」
まるで猫のように襟首を掴まれたままの千井は、そのままへらへら笑っている。順応力高い。
「歩けるか?」
「ちょっといたいですけど支障はないです」
そう言ったものの、千住サマはいまだに不安なようで、千井をぽいっと後ろに放り投げると屈んで視線を合わせる。
まるで、心に直接語りかけるかのように。
「……心配だから、誰かと一緒に帰れ。今日は準備の初日だし、実行委員やらされて忙しくて、一緒に帰れそうにないから」
「わかりました。じゃあ、今日は凛琉と一緒に帰りますね」
「明日からは、早めに切り上げて俺が送る」
「えっ、そんなことできるんですか?」
「千井に押し付ける」
「ここで僕の登場?!?!いいよやるよさっきの仕返しだもんね!!!!」