今夜はずっと、離してあげない。




お母様の言葉にそれぞれ別の反応を示していれば、ハタと気づく。


……あれ?でも、そーいえば、お母様は今海外転勤中だって……。




「日本に戻ってきたんですか?」

「……え?」

「あ、えと、千住く、んからお母さんは海外転勤中だって聞いていたので……」




……あ、そうか。

帰ってきているのなら、もう、帰る家はあるんだ。


だから、私の家で、もう出迎えてくれることも、ご飯をつくってくれることも、他愛ない話で盛り上がることも、できない、んだ。




「……うんっと、そういうわけではない、んだけど、しばらくはこっちにいる、かな」

「……あ、そうなん、ですね。それって、千住くんは、」

「まだ知らないの。帰ってきたことも話してないから」




そのことに、ひどくホッとしている自分がいた。


こんなこと思っちゃダメだって、分かってるけど。どうしようもなく、安心した自分がいて。



……そんなことを思ってしまった自分が、ひどく醜く見えた。



< 197 / 415 >

この作品をシェア

pagetop