今夜はずっと、離してあげない。
離さない夜





私の家のちかくにある、伽夜がバイトに勤しんでいるカフェにて。



「ゔっ……、き、緊張で胃が痛くなってきたんですけど……」

「お前本番に弱いタイプだっけ?」

「今までは強い感じに見せてましたけど、本当は弱くはないですけど強くもないです……。というか、これはそーゆーこと以前の問題で……」



12月24日。大多数の人々にとっては、聖夜というイベント間近で、最も心が浮かれる日。


……けれど、私氷高真生にとっては、生まれてからの15年間の中で、もっとも胃が痛い日だと言っていい。



「大事な話をする時に、息子の隣にそのお友達、もっと言うと妹分みたいな人間がいたら普通に困るしふしぎ……いや、不審に思いません……?」

「それなら大丈夫。母さんにはあらかじめお前が同席することは伝えてある」

「用意周到なことで……」



すでに根回しされているこの現状、どうやっても途中退場することは許されないらしい。


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