あやかしあやなし
「そうか。だから下っ端なのだな」

 納得したように、惟道が頷いた。

「なるほどね~」

 小丸も、ぽん、と手を打つ。その途端、とうとう青年が爆発した。

「き、貴様ら! この私にそのようなこと言って、ただで済むと思うのか!」

 掴まれていた腕を振りほどき、惟道に向けて突き出す。

「後悔させてやる!」

 両手で印を結び、短く呪を唱える。ぽ、と拳が光った、と思った瞬間、その光は矢となって惟道を襲った。
 だがそのとき。

『ぎいいぃぃぃっ!』

 惟道の中から、凄まじい妖気が発せられた。

「ううっ?」

 強すぎる妖気は、人には毒だ。まして気に敏感な術師である。烏天狗の強い妖気をまともに食らい、青年が蹲った。少年のほうも、顔をしかめて膝をつく。

「雛っ。大丈夫かっ?」

 倒れているのは目の前の術師なのだが、惟道は慌てたように己の胸に手を当てて、内に呼び掛ける。

「小丸っ! 雛は? 雛は無事かっ?」

「え~? ……う~ん……死んじゃいないよ。……でも大分弱ってるなぁ」

 元々弱っているところに、ありったけとも言える妖気を放出したのだ。負担は大きかろう。
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