あやかしあやなし
「それにしても、まさしく因果応報よなぁ。見事なまでの運命の輪じゃ」

 しげしげと惟道の傷を見ながら、和尚が言う。惟道の額に施した鬼の印と結界を、他でもない道仙自身が破ったのだ。

 京をいたずらにかき乱せば、たちまち陰陽師に知られることとなる。まして鬼を放つなど、陰陽師に喧嘩を売るようなものだ。自身の腕を過信する道仙は、鬼を追って道仙宅に赴いた章親と、章親の友人の加茂守道(かものもりみち)を鬼に喰らわせようとするが、相手は稀代の陰陽師である。簡単に仕込んだ穢れを見破られ、さらには加茂守道との術合戦での決着となってしまう。

 道仙も父は高名な外法師であった。その実力は、かの安倍晴明にも引けを取らないと言われていた。奇しくもその父も、かつて安倍晴明と術合戦をして敗北し、京を追われた過去がある。道仙はそれを根に持ち、京の中心を壊すつもりだったのだ。そんな道仙が似たような術合戦を仕掛けられたのも運命であろうか。

 加茂守道との術合戦は、お互いの攻撃を結界で防ぐ、というものであったが、道仙の攻撃は、守道の簡単な結界にも効かなかった。元々道仙には、さほどの実力もないのだ。道仙の唯一の才能は、教本を元にその術を再現することであった。だがそれも、惟道に言わせれば穴がある。再現できても術そのものを理解していないので、完璧ではないという。
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