もういちど初めからー塩キャラメルとビターチョコー
「りょ…うこ?」
「やっぱり」涼子(りょうこ)がびしょびしょの顔で笑う。
「やっぱり、止められない…か」
 えっ?
「ずっと、ずっと――。最初に気づいたときから、藤島(ふじしま)くんの視線に…気づいたときから、あたしには、こうなること、わかってた」
「涼子…なに言って……」
「初めてできた、友だちだった…のに。とら…れる、くらいなら。だれかにとられるくらいなら! うそ…ついて、苦しめても、そばにいて…ほしかったのに」
「涼子、ほんとに、なに言って……」
 涙にうろたえるあたしに、涼子がふるふると首を振る。
「藤島くん…ね」
 泣き笑いの顔で、涼子が自分の(ほほ)を手の甲でぬぐった。
 そんなことをしたら、せっかくのメイクが台無しなのに。
「藤島くん、あたしが彼のことなんか好きじゃないの、わかってたよ」
 えっ……?
「友だちをしばるなって……。心配しなくても、明緒はおれなんか好きじゃ…ないから。おまえも自分の気持ちに…うそ…つくなって」
「……涼子」
「ち…く、しょう」
 手の甲で右と左、ぐいぐいと大きく涙をぬぐいながら、涼子がフェンスの向こうを見て、ふてくされたみたいに笑う。
「好きだって言って…さ。お説教されるとは思わなかったわよ。実際……」
「…………」

「明緒……」いつだってひとを、すくませるほど強い瞳で見つめる涼子が目をふせた。
「ごめん…ね。もういいよ、アイツのこと好きになっても……」
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