もういちど初めからー塩キャラメルとビターチョコー
17.エピローグ
17.エピローグ

 あたしは、つらい夢を見なくなった。
 アイツがそこにいても……。

 男とか、女とか。
 そんなことにこだわりたくないのは、いまも同じだけど。
 そんなことで傷ついた自分のことを、だれかに――慎吾(しんご)に――話しちゃったあたしは、もうちがうあたしなんだと思う。
 それを聞いてくれた慎吾も……。

 どこが同じで、どこがちがうのか。
 それはきっと、ほかのだれかにはわからない。
 でも、こっそり変わっている、新しいあたしたち。


「…うす」
「おはよ」
 朝のそんなあいさつだけで、このごろあたしは慎吾がわかる。
 今日の慎吾はちょっと眠そうだ。
 ゆうべ遅くまで勉強をがんばったのかな?
「あーあ。また寝坊したね、慎吾。髪……、寝ぐせでひどいことになってるよ」
「ばっ…。ばか言え。これはファッションだっ」
 そんなことを言って、あわててなでつけているくせに。
「おー、やだ。小学生じゃあるまいし。いいトシしてさ」
「なんだよ! 自分だってガキのころと全然変わってないじゃねえか」
「なにが?」
「……さて、な」
 横を向いた慎吾が、親指で鼻の頭をぽりぽり。
 ちょっと!
 なんなのよ、その思わせぶり。
「言えっ!」
「やだ。言ったらおまえ、ぜっってえ怒るもん」
 ばかか?
「もう怒ってるの!」
「なるほど」
 慎吾が笑いをかみころした顔で腕を組んだ。
「言えっ!」
「いや、だから、さ」言いながら手を口に持っていってニタニタ笑いを隠す。
「もーちょっと肉付きがいいほうが、抱きごこち、いいかなぁーって」
 ビンタ1発! 
 伸ばした手は、慎吾のてのひらに当たって不発。
「だから怒るって言ったのにぃ」
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