もういちど初めからー塩キャラメルとビターチョコー
 うごめく黒い頭の上に、ひょいひょい顔をのぞかせながら、混んだ車内を他人の迷惑かえみず、こっちににじりよってくるバカ。
(あれは、まさか――)
 ううん、まちがいない。
 あれは絶対、藤島(ふじしま) 慎吾(しんご)
(なにをして――…)
 思ったとたんに目が合った。
(マジ?)
 気づかなかったふりをするには、もう遅すぎる。
 こんなふうに、あたしが橋渡しの役をすることになるなんて思ってもなかったけど。
 アイツがいまモーションをかけてきたら、あたしにはもうできることは…ない。
 だって、涼子は待ってるんだから。
 どんなに好きになったって、自分から近寄っていくなんて思いつきもしないお姫様は、もちろんふられることなんて考えてもいなくって。
 いつか、アイツが声をかけてくるのをたぶん待っている。
(ちくしょう!)

 藤島は、(あいだ)にある頭の数が、じゃまにならない程度の距離にきて立ち止まった。
 頭の上に折れ曲がった()り広告をのせている姿は、まぬけっていうしかなくて。
 なんでだか悲しい気持ちになってくる。
 もちろんそんな気持ちは、あの! チビでのろまだった慎吾に! なんと、見下ろされているという不快な現実に、あっという間に消えたけど。
 はずれない視線をはねかえすようににらみつけていると、あたしを見ている藤島の口が小さくひらいて、また閉じた。
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